芸備線〜木次線2010年10月22日 21:28

新見を出た1両編成のワンマンディーゼルカーはしばらく伯備線を行く。最初に停まる布原駅は伯備線の列車はすべて通過してしまう変わった駅だ。備中神代駅で伯備線から離れ、芸備線は山中へと入っていく。
今朝ほど乗った因美線に負けずこちらもかなりな秘境感があふれている。日に数本しか走らず、この次は16時まで待たねばならない。
50kmの距離を1時間20分かけて備後落合に到着。芸備線は広島まで続いているが、新見発はここから先には行かない。
備後落合駅は山奥にあり、駅の周辺には何もなく山々がそびえるばかりだ。だが、この時間だけは人口密度が急に上がる。芸備線の上り下りと木次線の列車が一堂に会す瞬間なのだ。それぞれに乗り換える客とそれを見に来る物好き人とで静かな駅は一転賑やかになる。
備後落合
それもつかの間、それぞれから来た列車は休息をとるのもそこそこに元来た路線に行儀良く引き返して行ってしまう。
私は14時25分発の木次線に乗る。木次線は中国山地から日本海側へと降りていく路線だ。これまたかなりな閑散路線で、備後落合発は日に3本。終点の宍道駅まで行くのは夕方の1本のみ。
末期的ダイヤだが、見所がある。備後落合から3駅目の出雲坂根は全国でも僅かとなったスイッチバックのある駅だ。現在の土木技術ではトンネルと高架橋で線路を敷いて行くのであろうが、木次線は開業当時のまま、地形をトレースするように右へ左へ向きを変えながら中国山地を抜けて行く。
スイッチバックを造ってでも線路を繋ごうとした先人達の思いはこのまま伝えていってほしいものだ。
JR西日本最高度を走るディーゼルカーからは道路の橋であるおろちループ橋が見える。高いところを走っている事が実感できる景色だ。
おろちループ

この列車は出雲横田止まり。時刻表によると宍道行きとは40分ほどの待ち合わせがあるが、なんのことはないこの車両がそのまま行くそうだ。
ここで降りる人も乗ってくる人もなく出発。待ち合わせ時間を含めて82kmを3時間もかけて宍道駅に17時36分到着。
山陰本線に乗り換えて18時46分に米子へ戻ってきた。
ただひたすらに乗り続けた1日であった。
終わり

因美線〜津山線〜伯備線2010年10月16日 22:44

これしかないと言うようなタイミングでの乗り継ぎ。実際、因美線で津山まで行こうと思うと12時51分まで待たねばならない。これしかない。
地元の方と見受ける数人と、鉄臭を発散させた人数人を乗せて定刻8時21分に動き出す。ここから先しばらく1キロ進んで20メートル上るという勾配を登っていく。山間部に入っていくと両側から延びた小枝が車体にカラカラと当たる。まさに分け入っていると言う感じだ。よくもまあこんな所に鉄道をと感心しきり。
山中でほとんど止まりそうな速度になった。どうしたかと外を注視していると、制限速度30kmの標識が出ていた。しかも雨天は15km。今日は雨は降っていないが昨夜に降ったせいか15km制限になっているようだ。それほど険しいところを走っている。
長いトンネルをゆっくりと抜けると岡山県に入る。地元の方々は一人二人と減っていき、車内は益々鉄分が濃くなる。
知和駅
岡山側は坂を下っていくが速度はさほど上がらないまま、味わい深い木造駅のある駅に一つずつ停まっていく。「知和駅」は秘境駅と呼ばれているが。以前に車で訪れた時にはさほど秘境感はなかったんだが、こうして路線を辿ってくるとまさに秘境を行く鉄道と言っても良い。
津山
約1時間で津山に到着。津山駅は岡山県内でも主要な駅で、姫新線、津山線、因美線が乗り入れている。ここもかつては各方面への長編成急行などが行き交っていたが、いまは只、不釣り合いに長大なホームがその名残を残すのみ。奥の方には珍しい扇形車庫が見える。
しかし、これから乗る津山線ホームには多くの人が到着を待っている。今日初めて多人数を見た。さすが岡山へ行く需要はかなりなものである。遊びに行くと思われる若者も多い。会話の端々に新幹線の乗り継ぎの話題が聞こえてくるのは旅行者であろうか。
ホームに入ってきた列車は津山停まりで、折り返し9時49分発岡山行きになる。そこそこ満席になるので、通勤電車のごとくロングシートに座る。なんとなく旅情感は薄れ、車速も因美線とは比べものにならない速さで岡山へと向かう。時刻表によるとこれは「快速ことぶき」と表してある。岡山まで満席のまま10時59分着。
岡山駅はさすが新幹線も止まる駅で、駅ビルにはデパートも併設されていて賑わいは都会並み。山の中からとことこ列車で来たのがうそのようである。
11時14分の伯備線新見行きに乗る。伯備線は倉敷が起点であるが、倉敷始発はない。伯備線は乗り慣れた路線なので特に珍しさも無い。本日2番目に長い区間を乗るがほとんど寝ていた。
12時43分新見着。4分の待ち合わせで12時47分発の芸備線三次行きに乗れる。ここからまた秘境に突入だ。

山陰線から因美線へ2010年10月14日 21:00

午前4時きっかりに家を出る。さすがに外は真っ暗で星がよく見える。本日のスタート駅である米子駅までは車で行き、駅近くの駐車場に預けて4時半に駅に到着。鳥取発7時23分の因美線に間に合うためには米子発4時55分鳥取行きに乗らねばならない。さすがにこの時間は駅も閑散としている。改札はおろか窓口にも人がいない。これから乗る列車は米子始発なので早々に3番線に入線している。赤い塗装のディーゼルカー2両編成である。乗ってしまえば各駅停車ながら終点鳥取まで乗り換え無しで行ける。米子駅は山陰線の中心的な駅であり、往時は関西方面への特急や急行が頻繁に出入りしていた記憶があるが、今はどうしたことか西へ向かう列車は鳥取行きの普通列車がほそぼそと行くのみ。特急は伯備線で岡山へ行ってしまう。関西へは新幹線でというダイヤだ。
乗客は私以外に2人。ボックス席を陣取る。定刻で駅を出ると暗闇の中をがらがらの車内にエンジン音を響かせながら進んでいく。外を見ても漆黒の闇が広がるばかりで、いつの間にか睡魔に負けてしまう。
早朝の米子駅

ふと気付くと空は白んできておりまもなく倉吉に着くようである。乗客は米子を出たときとあまり変わらず2〜3人。米子を出て1時間ほど経っていて6時前だが、時刻表によると倉吉発は6時23分になっている。倉吉駅に到着すると「20分停まります」とのアナウンス。何の時間調整かは分からない。持ってきたパンとジュースで朝食。何人か降りていったが、発車までに戻ってきた。前方の車両にはそこそこ乗客がいるようだ。ワンマンカーなので前の車両の方が降りるのに便利だからだろう。
倉吉から各駅で乗客を拾っていく。ほとんどが高校生、なぜか女子がほとんど。しかも今日は祭日なのにどう見ても通学スタイルである。私の前にすわった女学生は問題集を広げ真剣に数式に取り組んでいる。模試でもあるのであろうか、他の学生達も静かに書籍に目を落としている。
鳥取に着く頃には席はほぼ埋まっていた。
鳥取駅を発着する列車も米子に負けず寂しい限りであるが、駅舎は高架化され都会駅並みの構造になっている。そんな立派な高架式ホームに3両編成のディーゼルカーが停まっている。因美線智頭行きである。
これまた学生達を満載して発車。まあまあ需要があるんだなと思うまもなく3駅目の郡家駅でほとんど降りてしまった。すっかりからっぽになった3両編成は寂しく智頭に到着。
ここで津山行き乗り換え。さらに寂しく1両編成のワンマンディーゼルカーがぽつねんと待っていた。

JR西日本乗り放題2010年10月12日 21:27

JR西日本乗り放題きっぷ
10月14日は鉄道の日だそうです。それにちなんで毎年各地でイベントが開催されるようで、特にここ近年はその数が増えたように感じます。本家JRでも色々あるようですが、「鉄道の日記念・JR全線乗り放題きっぷ」って物に毎年心が動きます。2週間ほどのうちに3回まで使えて9180円と言う太っ腹ですが、はたして3回も乗り回れるのかといつも躊躇していました。
こちら山陰でももちろんそれは使える訳ですが、「鉄道の日記念・西日本一日乗り放題きっぷ」なんてぇ物がJR西日本にはあったんですね。1日乗り放題で3000円とちょうど良い感じです。早速米子駅へ購入に出向きました。
窓口で「西日本一日乗り放題きっぷくださいっ」って言うのも気恥ずかしいなぁなどと逡巡しながらみどりの窓口へ行くと、何のことはない自動発券機で買えました。買った当日には使えないとのことですので、駅内の書店で時刻表を購入して帰り、じっくりルート研究することにしました。研究と言ってもたかが知れていて、山陰地方はローカル線の集合体みたいな所で、山陰本線すら偉大なるローカル線などと揶揄されるしまつ、おのずとルートは決まってきます。
それならば究極のローカル線でも巡ってみようかと考えました。結果、山陰線で鳥取〜因美線で津山〜姫新線で新見〜芸備線で備後落合〜木次線で宍道と回ってまた米子へ戻ると言うルートを取りました。
最初の難関は因美線。鳥取〜智頭は特急も走る華やかさですが、智頭から津山まではかなり渋いです。特急は智頭から智頭急行線で他へ行ってしまい、普通列車も全て智頭止まりです。乗り換えて津山に行くにも8時台を逃すと次は13時ころまで無く、さらにその後は16時過ぎと言うのんびりさです。おのずと8時台に乗らねば先の予定が立ちません。
次の難問は姫新線です。姫新線は姫路〜佐用、佐用〜津山、津山〜新見にダイヤが分断されていて、津山〜新見は1日に数本しかありません。
そしてそして芸備線。時刻表をぱっと見でもわかるんですが、広島〜三次にくらべ三次〜新見のなんと閑散としたことか。新見と備後落合間を行く列車は1日3本です。
こんなこと乗れるのかと思いますが、それがあるんです。米子を4:55出ると鳥取発7:23の因美線に6分の待ち合わせで乗れて、智頭で8:21発の津山行きと接続。津山に9:31に着くと10:11津山始発の姫新線があり、新見で1時間待てば芸備線の12:47新見発で備後落合へ行けます。木次線も他に劣らず閑散路線で備後落合発なんて3本しかありませんが、ちょうどこの時間14:25発出雲横田行きに乗れます。
奇跡のような乗り継ぎですが、新見で1時間待ちが気になります。丁度昼なので昼食にあてるのも一興ですが、ここはもう少し考えました。津山からは津山線が岡山へ向かっています。岡山からは伯備線で新見に行けます。時間的にはどでしょう。前述のとおり津山には9:31着なので9:49の快速岡山行き乗れそうです。岡山着10:59、伯備線には11:14発に乗れば新見着が12:43で、これはズバリです。新見の1時間待ちが4分に激減しました。せっかくの乗り放題ですから駅でぼけっとするよりも良いでしょう。
そうと決まれば即実行です。つづく。